2005年02月01日

プラネテス 第26話「そして巡りあう日々」

文句なし。完璧な締めくくり。素晴らしい最終回でした。これまでの25話で描かれてきた全てが、一旦ここに集約され、また未来へ向けて発展していくような…。涙が溢れ出すような類いのものではないが、深く静かな感動に包み込まれる。やはりプラネテスはすごかった。もはや語る言葉がない…、感想も書けない…、けど、一応なんか書いとかなくては。前回は批判的に書いてしまっただけになんか筆が重い、というかキータッチが重いような気がしますが…。25話と26話を続けて1時間の枠で放送してくれりゃ良かったのに。そうすれば、あんな感想書かなくてすんだのにー。などと、少しばかり後悔の念もありますが、まあ、あの時点での感想を書き留めておくことも、それなりに意味があったとしておこう。さすがに皆が「まあ、とにかく最終話を見なさい。話はそれからだ」と言うだけあって、25話の時点で色々納得いかないことも、この26話を見ればだいたい納得いきました。ただ、ハチマキの悟り方についてはやっぱり納得できませんでしたが…。

ただ、「人は皆繋がっている」というテーマは、この26話によって見事に完成したというか。この26話では、今までの登場人物が勢ぞろいして、これでもかとばかりに人と人との繋がりが描かれてます。もう本当に、マジで、鬼のように繋がってます。またそれだけに留まらず、これから先も連鎖的に指数関数的にバンバン繋がっていきまっせ!みたいな。すごいです。ま、とにかく、これですよ、これ。こういうのが見たかったんだよ。人は皆繋がってるんだと実感できるように、こういう風に物語として見せてほしかった。あんな25話の人間の螺旋みたいなイメージ絵なんかではなく。

ぶっちゃけ、ハチマキがこのプラネテスのDVD全9巻を見て、それで「そうか、すべては繋がってるんだ!」って悟るならまだ分かる。それなりに説得力はある。だけど、あんな海で溺れたときに見た、うさんくさい幻覚程度で悟るなんてありえない。あんなんで今まで自分が見てきた宇宙をいきなり全否定するなんて、全然説得力がない。つまり、こういうテーマを描く場合、ダイレクトなイメージ絵なんかよりも、いかに「物語の力」が大きいかということですね。これについては、舞城王太郎が「暗闇の中で子供」の中で上手いことまとめてる箇所があるので、ちょっと引用してみます。
どうしてこの世にないストーリー、フィクションなんてものをわざわざ生み出す必要があったんだ? 猿が進化しただけの俺達にどうして物語が必要になるだろう。(中略)喜びも悲しみも楽しみも寂しさも現実にあるもので十分なのにどうして作り話が必要になるんだ? 作り話はつまり嘘の産物だ。何で嘘なんかがここに介入して来たりしたんだろう?俺は答えをちゃんと知っている。それはつまりこういうことなのだ。

ある種の真実は、嘘でしか語れないのだ。

本物の作家にはこれは自明のはずだ。(中略)ムチャクチャ本当のこと、大事なこと、深い真相めいたことに限って、そのままを言葉にしてもどうしてもその通りに聞こえないのだ。そこでは嘘をつかないと本当らしさが生まれてこないのだ。(中略)そういう正攻法では表現できない何がしかの手ごわい物事を、物語なら(うまくすれば)過不足なく伝えることができるのだ。言いたい真実を嘘の言葉で語り、そんな作り物をもってして涙以上に泣き/笑い以上に楽しみ/痛み以上に苦しむことのできるもの、それが物語だ。
「人は皆繋がっている」という「ある種の真実」を、プラネテスは26話かけて見事に描ききり、証明してみせたと思う。だから仮に、ハチマキが宇宙真理教とか新興宗教を作って、その教祖をやる場合、「すべては繋がっているのですーっ! あなたもわたしもみんな繋がっているのですーっ! それが宇宙なのですーっ!」と街頭でいくら訴えてもダメなわけで、誰も聞いてくれないわけで、それよりも、プラネテスのDVD全9巻を聖典にして住宅を戸別訪問し、「いいお話が入ったDVDなんです。ポストに入れておきますから、また見ておいてくださいねー」などとプラネテスDVDを無料で配り歩いた方が信者を獲得しやすいというわけです。うちも基本的に宗教の勧誘はお断りで、冊子とかもらっても読まずに捨ててるけど、これなら喜んでDVDもらっときますよ。ええ。(入信はしないけどな。)

そういうわけで、25話のあの場面についてはまだ納得できていないのですが、とりあえず26話を見るかぎり、脚本家も物語として描く必要性を当然ちゃんと分かっていたようで安心した。まあ、この最終回をやるために、ハチマキには強引にでも悟りを開いてもらって、大急ぎで最終回に間に合わせる必要があったということでしょうか。

ハキムとクレアのエピソードに関してはすごく良かったですね。25話だけでは納得できなかったことも、これでだいぶ見方が変わってしまった。

まずハキムについて。
ハキムを負かすのはハチマキでもタナベでもなく、なんとノノでしたか。ノノ最強! さすがアルテミスの通り名は伊達じゃなかった。(一歩間違えれば殺されてたけどな…。) 振り返ってみれば、この出会いを描くためには、ハチマキとの決着をつけず、ああいう形で終わらせておいて良かったように思えてきます。ハキムは国という枠にこだわりすぎだとは思ってたけど、それを他の大人が指摘したところで分かり合えるわけもなく、結局大人同士ではハチマキとのように殺し合いにしかならず、ノノのような特殊な存在の、その子供の純真さでしか、ハキムの心を動かすことはできないということでしょうか。これでハキムが救われたわけではないし、テロリストを辞める決心をするわけでもないだろうけど、この出会いは、ハキムの中に何かしら大きなものを残したんじゃないでしょうか。しかし、ここで二人を結びつけてくるとは、やられました。やっぱすごいわプラネテス。また、この場面の構図がすごい。右半分は基地からの光が当たっていてそこにノノが立ち、左半分は暗闇の中でハキムが立ち、二人揃って地球を見上げる。なかなか深いものがありますよねー。本当に感心した。時間的には短かったし、サッと流した感じもあるけど、なかなかの名場面ではないかと。「二人の囚人が月面から地球を眺めたとさ。一人は国を見た。一人は星を見た」みたいな。いや、ハキムにも国は見えなかったわけですが…。

クレアとタナベの話は、25話の時点ではたまたまシャトルバスの通り道で助かっただけのように思ってしまったけど、真相は全然違ってましたね。本来シャトルバスは二人に気づかずに通り過ぎてたはずで、タナベを救ったのはクレアだったと。クレアの意識はないものと思ってたけど、実はしっかりしてて、タナベの行動も分かっていたんですね。全然意味が違ってくるなぁ。ここの場面はタナベのみならず、クレアの心を描く上でも重要な場面になったわけで。う〜ん、よくできた脚本ですよね。もがき苦しむタナベの絵まで入れてくれて、言うことなし。いや、タナベの決断の結果をしっかり描いてくれてるという意味で。

さあ、あと何を書こう。なんというか、もうプラネテスに関しては感想書く意味を見出せないというか。何を書いても自分の気持ちを全部言い表すことができるとは思えない。自分の感想文作成能力の範疇を超えてる作品ですね。(笑) ただ今は、もう一度、第一話から全部通して見直したいですね。気づかなかった点もいっぱいあるだろうし、最終話まで見た今だからこそ感じることもあるだろうし。プラネテスの凄さは、精緻に計算された完成度の高い脚本にあると思うんですが、なんとなく「絡新婦の理」の蜘蛛を思い出します。プラネテスの脚本家も見事に運命の糸をつむいでるというか。なんなんですかね、この美しいまでの構造は。まあ、すごい作品ですよ。個人的にはアニメ史を語るとき、エヴァンゲリオン→カウボーイビバップ→攻殻機動隊SAC→プラネテスと来ますね。この4つは別格です。中でもプラネテスは一ニを争うほど好き。さて、これに続く名作はいつ現れるのか…。とりあえず、今はプラネテスという素晴らしい作品が生まれたことに感謝して、もう一度再放送してくれるよう、NHKに要望のメールでも出そう。(笑) 今度は夜7時頃がいいなぁ。
posted by ごくし(管理人) at 18:43 | Comment(8) | TrackBack(6) | (アニメ感想)プラネテス
この記事へのコメント
人はみんな、(トラックバックで)つながって……(略

同じく、カウボーイビバップとプラネテスは突出して好きな作品です。またこういう作品に早く出会いたいものですが、いったいいつになるのやら。待ち遠しいです。
Posted by Mobius at 2005年02月01日 21:36
はじめまして。TBありがとうございました。
プラネテスの構成、確かに京極作品に繋がるかも!
大風呂敷にならず、最後とても綺麗でした。
私もエヴァンゲ、ビバップ、攻殻みな好きです。
こういう作品、もっともっと見たいですね。
Posted by にゃにゃ。 at 2005年02月01日 23:52
私もエヴァ、ビバップ、攻殻ともに好きですね。ただ、この三作品よりもプラネテスは変に気取らず、体当たり的にメッセージを伝えてくれる気がするので、そういった意味ではプラネテスの方が自分には合ってたなあとも思いました。まあ、それぞれ良さが違うんですけどね(笑)
Posted by Tkd at 2005年02月02日 23:41
コメントありがとうございます。というか、繋がってくれてありがとうと言うべきでしょうか。今、激しく宇宙を感じております。
いえ嘘です。(笑)

上に出した4つの作品は、もちろん単純に比較できるものではないですけど、それぞれに他の追随を許さない、突き抜けたものがありますよね。
自分もTkdさんと同じく、プラネテスが一番合ってるように感じます。いや、多分万人に合ってるのではとも思う。そういう普遍的な何かがあるというか。ネットラジオでも小学生からお年寄りまで、幅広い年齢層が見たとか言ってましたけど、誇張ではないような。
Posted by ごくし(管理人) at 2005年02月03日 07:34
最終話までの視聴、お疲れ様でした。

さて、ハキムとノノなのですが。
脇役まで広くカバーしているエンディング。
しかし、この二人だけはそこには登場しないんですよねえ……。
あの後、二人がどうなっていくのか全く分からない。
完全なハッピーエンドに見えて、実は暗い影が残ってるんですよね。

ハキムの信念は、そう簡単に揺らぐものではないし、
(というか、もはやそれにしがみ付くしかない状態に思える)
ノノは、ルナリアンというこれまでとは全く違う新しい存在なので、
両者の未来は全く予測出来ない、ということでしょうか。
Posted by kei at 2005年02月03日 14:01
おお、なるほど。二人がエンディングに出てないことに、そんな深い意味を読み取りましたか。

月面の二人の場面で自分が思ったのは、二人は新時代と旧時代の象徴なのかなーと。ノノは国という枠を超越した存在で、やがてくる宇宙時代の到来を予感させ、一方のハキムは古い価値観にしばられ、新時代に対応できず取り残されていく人間の隠喩なのかなと。

ただ、ノノも決して「輝ける未来が待っている」みたいに全肯定できるように描かれてるわけでなく、望む望まざるに関わらず生まれてしまった存在でモルモットのようでもあり、これにどう現実が対応していくのかという問いを投げかけ、またハキムによって提示された先進国と後進国の格差の問題も同様で、両方とも作品内では簡単に答えを出さず、見ている者にダブルの問いかけを残したまま終わるという感じでしょうか。

ハチマキたちの物語はひとまずハッピーエンドで終わらせるけど、現実に人類が宇宙へ進出していくには、色々クリアせねばならないハードルがありますよってメッセージなんでしょうね。
Posted by ごくし(管理人) at 2005年02月04日 18:07
はじめまして。TBありがとうございます。

いろいろ問題があるらしいNHKですが、「プラネテス」をBSと地上波で放送してくれたというだけで、『受信料払うからまた良い物見せてくれ』という気分であります。

これもまたひとつの繋がりというものでしょうか…(^^;)
Posted by わきわき at 2005年02月11日 23:33
ホントそうですよねー。受信料払うときに、その使い道を指定できればいいですよね。この金はアニメ製作に使ってくださいよって。人によっては大河ドラマだったりドキュメンタリーだったり色々でしょうが、好きな番組のためとあらば、喜んで払うかも。金のある人の中には人の5倍10倍払う例も出てきたりして。
Posted by ごくし(管理人) at 2005年02月12日 07:55
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